テレビの題名にもなり全国的にも有名になった花嫁のれん。
花嫁の実家の紋や、めでたい吉兆模様を加賀友禅で優雅に染め抜かれた花嫁のれんは、娘を送り出す時の花嫁の幸せをいのる親の願いと心意気を感じます。
仏壇参りのその時に仏間の座敷の入口に花嫁のためにかけます。
昔は花嫁の部屋の入口に3日間は掛けられていたとの事です。
美しい花嫁のれんはその一回のためにつくられるのです。
金沢では結納の前にたもと酒があります。
新郎の親が新婦の家に一升瓶1本とするめを持参して、夕方訪問します。
そこで話しがまとまれば、持参したするめを肴に持参した酒を冷酒で杯を酌み交わす、というしきたりです。
地方によっては2升樽と決まっているところも有る様です。
この段階で話しが破談となれば、相手方の女性に傷がつかないようにと袂の中に一升瓶を隠し持って行った事からたもと酒と言われる様になったと、親から聞いたことがあります。
通常、この席で結納の日程や内容について両家での打ち合わせを致します。
また、別の説では袂とは即座に調えるという意もあるようです。
相手方の女性への この心配りが優しい。
人の出入りがほとんどない町では、ちょっとしたことが噂になってしまいます。嫁入り前の娘さんの事と考えたこのしきたりの心は今に伝えたい事の一つです。
結納とは二人の婚約を正式に公表するための儀式です。結納を済ませた段階で友人、職場にも「結婚」を公表しその準備に入ります。
この結納の時のお酒の事を本酒と言い、袂酒に対して結納を本酒と言い表す人もいます。
以前は仲人が両家の間を使者として行ったり来たりして進行していましたが恋愛結婚が多い現代では仲人を立てる事がほとんどなく、略式が主流となっています。
9品目が基本で、7品目、5品目と奇数で揃えるのが基本です。
どのような形にするかは両家でよく話し合って決められるケースが多い様です。
出席者はご両親とご本人の場合が多い様ですが、ご両家の顔合わせの意味もかねてご兄弟も出席するお家もあります。
花嫁が嫁ぎ先の玄関の敷居を一歩入ったところで、実家の水と婚家の水を合わせた盃の水を飲み、その盃をタタキに打ち付けて割る儀式を合わせ水といいます。
花嫁が嫁ぎ先に早くなじみ、幸せにすごす事が出来ますようにという願いを込めて盃を割ることにのがしきたりでした。
盃が割れると両家の親族が「めでたい」と拍手をおくります。
結婚式の前に花嫁が婚家の仏壇に参り、家族の一員となる事をご先祖さまに報告する儀式。
この時花嫁は白無垢となり、お供えの松花は花嫁が持参します。
お料理の一番最初に供されるのがおちつきの餅です。
日本では古くからおめでたい時には餅が使用される風習があり、つき固めた餅を契りの固さにたとえて祝い、婚家に落ち着きますようにとの願いを込めたお料理です。
今も、昔も、金沢の花嫁はなにを食べなくてもこれだけは口にするようにと勧められます。
お餅は紅白の丸餅を使うところと、のしもちを使用するところとあります。
のし餅を使うにもこだわりがあるようで、武家社会では「のし」は「伸し」につなげて縁起をかつぐ様です。
宴もたけなわの頃、大きな久谷焼の皿に一対の大きなにらみ鯛の唐蒸しがしずしずと出てきます。
鯛のお腹の中には卯の花と野菜の炒め煮がいっぱい詰められており、
「子宝が授かりますように」という縁起物です。
このにらみ鯛の特徴の一つは切腹に繋がるからと腹ではなく背開きになっている事です。
ここにも城下町金沢のこだわりを感じます。
にらみ鯛の姿をご覧いただいた後、小皿に取り分けてお客様のお手元にお付けする事になります。
前田利常公の奥方、珠姫がお輿入れの時につくられた婚礼のお菓子。
5種類のお菓子がそれぞれ意味を持っています。「日月山海里」という別名があり、壮大な自然をお菓子で表現してお祝いするもので金沢独特のものです。
婚家への道具入れの時に花嫁側から持参し、ご近所に配ばられたもの。
かざり蒸籠五色万頭100ヶ入り箱には贈主の名前が書かれ、婚礼が終わるまで玄関に飾られていました。
鶴亀、松竹梅などののめでたく美しいものを表現したお菓子。
茶の湯の盛んな金沢では菓子文化も素晴らしく、その技を用いて婚礼のお菓子を創作。
3ッ盛り、5ッ盛り、7ツ盛りとあります。
丸い紅白のおせんべいに緑の松葉をそえて1セットとなっています。
30年前までは、結婚式の定番のお菓子でしたが、今はもう昔の話しです。